クマさんのバイク専科

Hさんの3台目のプロジェクトMへのご提案です!

スポーツバイクつくばマツナガのフレームビルダー松永一治氏が設計、つくばのショップ内の工房で製作する、フレームスケルトン、前三角カーボン、うい露三角カーボン、カーボンフロントフォークやクロモリフォークの選択、フレームチューブ、スチール製ラグ、フレームの剛性、カラーやロゴなど、フルオーダーのカーボンフレームを2台乗り継いでいる百哩大王の幹事役を務め、いつもお世話になっている長身のHさん、3台目のプロジェクトM製作へのご提案です。しかし、3台目とは松永クン信頼されていますね。

 

フレームスケルトンは1台1台設計されます。自在のスケルトンを実現するのが手作りのスチール製のラグで、設計に合わせてチューブから切り出して抗張力のロー材で溶接して作ります。クオリティの高い高弾性カーボン繊維と自転車フレーム専用設計されたフレームチューブと同じように、このラグこそフレームの剛性を左右する重要なパーツの1つです。通常のプロジェクトMのスチール製ラグは、ロー材が接合部だけに盛られて完璧に接合されています。

 

前三角カーボン、後ろ三角スチール、フロントフォーククロモリというコンストラクションで2台とも作ってもらいました。2台目のカーボン&スチールラグ接着フレームを発注したとき、1台目のカーボンフレームが、カーボンチューブのしなりやネジレでなく、スチール製のラグで変形しているのを感じました。このラグ作りから見直してもらい、素材は肉厚をもっとも厚いチューブにしてもらい、接合部のロー付け溶接の他に、接合部周辺にもロー材を盛ってもらうフィレット溶接をして強化してもらいました。

 

フレームサイズは芯—トップで515mmでしたが、当時最強のカーボンチューブと、フィレット溶接のラグとの組み合わせで、フレームのハンガー周辺やヘッド周りの剛性アップの効果は抜群でした。発注した当時、ピストで1000mを1分10秒ぐらいで走っていたのですが、松永クンに製作してもらったバイクは、丹下のナンバー2で組んだフレームより剛性があって、しかも、路面からの振動が減衰される特性を発揮しました。

 

このカーボンフレームはイタリアに持って行って乗っていましたが、チネリのレーザーの製作や、ペゼンティブランドのフレームを製作していたアンドレア・ペゼンティの目に止まり。たまたま体格が一緒だったので、お互いの自転車を交換して北イタリアのローマノ近郊のロングライドに出かけました。ペゼンティから借りたバイクは、チネリの試作品のコロンブスの楕円・三角・四角断面などに成型された異形スチールチューブのMSのレーザーでした。カンパニョーロのコルサレコードがセットされていました。ペゼンティ自身がコロンブスのMSチューブのフレームの乗り心地を試すスタディモデルのために作ったバイクです。

 

ペゼンティは前三角カーボン&クロモリのシートステーやチェーンステー、クロモリのフロントフォークのフレームに乗って、気が付いたことを色々話しかけてきました。このフレームは本当にカーボンなのかと、何度も聞かれました。いままでに乗ったことのないフレームの剛性バランスだと言うのです。当時のカーボンフレームにありがちだった、ハンガー周辺のウイップがほとんどないからでしょう。

 

フレームチューブは三菱か東レの高弾性のカーボン繊維を採用して、繊維を重ねる枚数や繊維方向の設計で、フレームチューブに重要なネジレ特性などを高めた自転車専用設計のカーボンチューブで、いままでで、一番剛性やネジレに強いモデルを採用していると説明しました。スチール製ラグとカーボンチューブとの接着は強力かと聞かれ、チバガイギーの抗張力の高い熱硬化型の1液の接着剤を使っていて、カーボンチューブが抜けたのを見たことがないと伝えました。

 

カーボン&スチールラグ接着のフレームを数本オーダーして、日本製のハイグレードのカーボンフレームチューブの強度を生かすには、このフレームみたいに、スチール製のラグをフィレット溶接して剛性を強化するとパワーロスのないフレーム作りに効果的なことが分かったといいました。ボクはイタリア語は挨拶程度しか話せないし、英語も怪しいけど、イタリア語よりはまし。ペゼンティは習い立ての、イタリア語発音の英語で一生懸命話してくれます。隣りを走りながら色々話していると、この剛性のあるカーボンフレームのバイクを気に入って欲しくなったようです。

 

実は、このカーボンフレームのシマノSTIレバー仕様のバイクをイタリアへ持って来て、ペゼンティと一緒に走ることにして、バイクを交換しての試乗のライドは、フレームビルダー松永クンのペゼンティの工房への売り込み作戦だったのです。イタリアのミラノに2週間の滞在中、チネリ、コロンブス、ピレリ、グエルチョッティなどの雑誌の記者としての取材を終えて、イタリアから帰る頃には、カーボンフレームはペザンティの工房で分解されて塗装がはがされて、イリュージョンピンクに塗られ、ペザエンティのロゴが入っていました。ボクはお土産にチネリのMS レーザーをプレゼントしてもらいました。

 

H さんの3台目のプロジェクトMの話しに戻りましょう。フレームサイズが大きいので、ラグをフィレットで仕上げましょう。チューブはダウンチューブにオーバーサイズ。フロントフォークは工房が秘蔵している剛性の高いグラファイトデザインカーボンフォーク。後ろ三角はスチール製で、シートステーはクロモリの薄いゲージの太いものを集合ステーで。チェーンステーはオーバルでブリッジ付きで組み上げます。

 

フロントフォーク、ヘッド周り、ダウンチューブ、チェーンステーのラインを強化して、踏み出しの軽さ、クランクを踏み込んだり回したりすれば、パワーロスなくスーッと前に出る特性を発揮する剛性バランスのフレームを狙います。ブレーキはシマノのデュラエースかアルテグラの3支点の最新のデュアルピボットブレーキ仕様にします。ストッピングパワーも大きく確実に止まれますから安心ですし、スピードコントロールもしやすいブレーキシステムです。28mmリム対応のブレーキキャリパーはホイールの着脱もスムーズになります。

 

ホイールは前輪がジョバン二のアマンダスポーツオリジナル設計の20mm×20mm断面の木リムの強化モデルを、36本の6本交差のスポークで組みます。振動減衰性が抜群で長く走った時の疲労を明らかに軽減してくれます。後輪はカンパニョーロのボーラ35か、コリマの35mmハイトのカーボンリムを32本スポークの手組みにします。ハブは前輪36穴だとデュラエースになります。後ろハブは32穴で、デュラエースなら、ばらばらで手に入ります。H さんご検討ください!。ではでは。