クマさんのバイク専科

シマノのシンクロシステムで思い出した伝達効率の話し

シマノもカンパニョーロもスラムも11段スプロケットのコンポーネントになって、リヤスプロケットのトップギヤからローギヤまでの外幅は同じになり、歯先間隔も同じになって互換性があり、どの11段スプロケットでもインデックス変速できます。11段のスプロケットのコンポーネントで先行したカンパニョーロは、早い段階からチェーンが極端に斜めにドライブするフロントとリヤのギヤの組み合わせを、伝達効率が悪くなるし、チェーンやチェーンリングやリヤスプロケットの歯先を早く消耗させることになるので、取り扱いマニュアルでは避けるように解説していました。

 

チェーンリングはインナーギヤ側、アウターギヤ側への変速製能を高めるために、歯先形状、形状の異なる歯先の並べ方、裏側のスロープ形状、チェーンを引き上げるきっかけになるスパイクピンの配置などを、コンピュータデザインして、チェーンの移りをスムーズにしています。ところが、インナーチェーンリングで、トップギヤやセカンドギヤのとき、アウターチェーンリングの内側のスロープや、歯先に近い位置にあるスパイクピンの出っ張りや、アウターチェーンリングの歯先と、斜めにドライブするチェーンが接触して、異音が発生したり、チェーンがアウターチェーンリング側へ移ろうとするトラブルが発生することがあります。

 

11段スプロケットになって歯先間隔が狭いナロー構造になって、スプロケットの厚さも0、1mm薄くなりました。当然、チェーンもナロー化されて、ぎりぎりに薄い設計になっているので、フロントのインナーチェーンリングとアウターチェーンリングの間に挟まらないよう、歯先間隔も狭くする必要があります。だけど、アウターチェーンリングの歯数とインナーチェーンリングの歯数差によっては、インナー×トップギヤやセカンドギヤとの組み合わせで、最新のフレーム設計ではチェーンステーの長さが410mm以下の短い設計が採用されているので、11段コンポーネントでは、斜めにドライブするチェーンと、アウターチェーンリングの歯先やスパイクピンとの接触の可能性が高くなります。

 

もちろんメーカーはこのような組み合わせで使うのを避けるように指示しています。でも、伝達効率が悪かろうと、消耗しやすくなろうと、実際問題、ロードレースやロングライドでは、チェーンが斜めにドライブする組み合わせを、使ってしまうことがあるんですね。基本、最新のDi2デュラエースは、そういう組み合わせのギヤ比に、手動で操るインデックス変速も、シンクロモードのプログラム変速もできないように、出荷時に初期設定しているコンポーネントです。

 

解除モードにカスタマイズできるのですが、公式には50T×34Tと52T×39Tの組み合わせでは、インナー×トップギヤやセカンドギヤへのインデックス変速やシンクロ変速の禁止を解除できないことになっています。ところが裏技で自己責任での使用になりますが、パソコンの変速モードの切り替えのアプリ画面に、虚偽の歯数を入力して、電動コンポへデータをインストールすれば。トップギヤ側2段への変速禁止の解除をすることはできます。

 

しかし、アウターギヤ×ローギヤにチェーンをかけた状態に2コマ、3リンクピン分のチェーンをプラスした長さのマニュアル通りの設定では、シングルテンションの新型リヤ変速機では、フロント歯数差16T、リヤ歯数差が19Tのチェーンの張りを調整しきれません。チェーンリングが50T×34Tに、フリーのスプロケットが11Tから30Tのワイドギヤの場合、インナーチェーンリングとトップギヤ側2枚のチェーンテンションを取りきれません。インナー×セカンドギヤあたりでチェーンがたるんでしまいます。

 

ぎりぎり14Tトップギヤでも、Bテンションボルトを締め込んで、シングルテンションのシャドーデザインのリヤ変速機の、パンタボディの取り付け角度を調整して、チェーンの張りをぎりぎり調整することができました。斜めのチェーンドライブとともに、もう1つ、チェーン駆動の伝達効率の話しを思い出しました。リヤスプロケットとチェーンリングの歯数の大きさの問題です。リヤスプロケットの11T・12T・13Tの小さなスプロケットの極端な伝達効率の悪さです。14Tでもかなり悪かったという記憶があります。

 

小さい歯数のスプロケットは、極端にチェーンが曲がってスプロケットの歯先に巻き付いてライダーのパワーを伝えます。直線のチェーンが歯先に沿って曲がって、歯先に巻き付いてパワーを伝え、直線に戻る時に大きなエネルギーロスが発生しています。ピスト競技では同じようなギヤ比に設定するなら、リヤのスプロケットをなるべく大きくして、チェーンリングも大きな歯数の組み合わせを選んで、伝達効率のいい組み合わせを設定するようになっています。

 

ロードバイクでは、11T・12T・13Tのトップギヤのスプロケットが普通に採用されています。追い風、下り坂、平地、タイムトライアル、トライアスロンなどで、小さい歯数のスプロケットは使われていますが、伝達効率はよくありません、踏み味を重く感じます。アウターチェーンリングで、リヤスプロケットをなるべく大きい歯数の組み合わせでドライブしている方が、パワーロスを少なく、クランクを軽く踏み込めたり、回すのが軽いと感じるのは事実なのです。

 

スプロケットの11T・12T・13T・14Tの歯数差の効率の違いは、ギヤの違いによる踏み味の変化だと思って気が付きにくいのですが、敏感なライダーはレーシングクランクの52Tの方が、50Tより踏み味が軽いことを体感できます。シマノはチェーンの斜めドライブのデメリットや、チェーンリングやスプロケットの伝達効率も配慮して、シンクロシフト、セミシンクロシフトのプログラミングを開発していると思います。このプログラミング変速のノウハウは深いな〜。ではでは。