クマさんのバイク専科

時計技師のみが味わえる機械式時計の魅力!

フィッティング&ライドの黒姫高原るんるん合宿で出会った人の中で、どんどん印象が濃くなってきたのが時計技師のさまぷーさん(ミクシィネーム)でした。ホームページの参加応募のアンケートのプロフィール記入は、自転車歴だけなので参加の段階でその人の職業は分かりません。まあ、黒姫高原に来てしまえば関係ないから、自転車生活を楽しみたいということで集ってくる仲間たちなのでそれでいいんです。バイクへの思い入れも色々だし、愛用のバイクの価格だって15万円から120万円くらいとばらばらです。何故か参加者のタイム率が高いようですけど。

 

ライダーの体格や筋力や柔軟性、心肺機能、耐乳酸性などの体力、そして走る距離などに合わせて、クリート、サドル、ハンドルとブラケットなどのポジションがローラー台とフィールドの走りで煮詰められ、mm単位で最適化されていなければ、ブランドやモデルや価格がどうであろうと、ライダーとバイクとの一体感や快適な走りは生まれません。初めて黒姫合宿に参加した時のTさんのロードバイクは、色々悩んでいじった後はありましたが、ほぼ素材の状態で黒姫合宿へやってきました。

 

100マイル(160km)を目指して走り込んでいたそうです。ところが、100km、150kmと走り込むと膝の痛みも発生しているとのことでした。黒姫合宿の初日の朝は、ペンションの玄関前で実施する、固定のローラー台にマイバイクをセットしてペダリングする、フィッティングで始まります。クリート位置の前後、内外、取り付け角度などの調整、サドルの前後位置や取り付け角度や高さの調整をして、クランクを踏めて回せる腰の位置をサポートします。そしてステムの高さ、ハンドルの取り付け角度やブラケットの位置を調整して、上半身の固定で腰の位置を安定させる、ゆとりのあるグリップ位置に設定します。

 

午前中にポジションを最適化して、午後は飯山方面へ一旦下り、斑尾高原へ11km上り、妙高高原へ下る、アップダウンのあるフィールドを実際に走ってポジションを微調整します。合宿初日のライドで、軽いギヤが付いたホイールを貸し出したりして、ポジションの最適化や乗って上れるギヤ比の大切さを実感したみたいです。クリートの固定位置はだいぶ悩んで迷宮にはまっていたようです。前後位置、内外、足の踏み込む角度に合わせて、取り付け角度は全く変わりましたが、踏み込むたびに足が踏み込みたい向きを探して、クリートを中心に扇形に動いていたペダリングは、踏み込むフェーズでも足が安定してほとんど動かなくなり、走り終わっても膝関節の痛みの発生はなかったみたいです。

 

初めての黒姫合宿参加の後、つくばにもマジカルミステリーツアーへ走りに来てくれて、つくばのクルマ少ない道を一緒に走って、前後や横から姿を見ることでポジションを微調整しました。そんな中でタイムのフレームで新車を組むことになりました。まだスポーツバイクつくばマツナガへブツは届いていないのですが、きっとワクワクしているでしょうね。何度も黒姫合宿へ電車で参加してくれるようになりました。

 

バイクが箱に入ってセラヴィへ届いていました。それを組み立てる時に目撃したのです。輪行用の段ボール箱の中に、バイクがばらばらになって整然と収納されているのです。ライドを終わってくたくたになっているはずなのに、箱への収納もぴしっとしていて、これは只者ではない、丁寧さがまるで違います。ミクシィ上のやり取りで、スイス製のナイフの話し、機械式の時計の話をすると、超くわしいのです。

 

オリンピック合宿でトレーニング中に、オメガの自動巻のスピードマスターが腕から飛んで壊れてしまい、スウォッチジャパンに修理を依頼しようと思い、問い合わせると10万円以上かかることが分かり、修理をあきらめたことを話しました。すると、ボクは機械式時計の修理をやっているので、今度見せてほしいというのです。電池切れで止まっている時計数個、壊れているスピードマスターもジップロックへ詰めて、図々しいですけど黒姫合宿に持って行きました。

 

スピードマスターを見て、年代や型式も言い当てて、硝子はあるし、パーツの供給もあるから、時間はかかるけど修理できるそうです。その他の電池時計も動くようにしてくれるそうでワクワクです。さまぷーさんは今月の最終の黒姫合宿にも参加しました。スピードマスターは分解されて、いくつかのパーツが消耗していたり、針やシャフトが壊れていて交換で、外周のベゼルがへこんでいたそうです。しかも、手持ちのコレクションの中にバンドがあり、それも取り付けてくれるそうです。

 

ドクターKのIWCやI奥様のロレックスを見せてもらっていると、2つの時計の年代や時計技師ならではの時計の評価や素性を教えてくれました。そして、「時計の外観はオーナーの楽しみだと思いますが、機械式時計のフタを開けて見ることはないでしょう」。時計技師は機械式時計のフタを開けて修理したり、オーバーホールします。「持ち主が見ることもないのに、なんでここまで仕上げるのという、メーカーが意地でやっているとしか思えない、機械式時計の本体のぴかぴかの状態を見れるんです」。なるほど、この仕事にはそういう特権があるんだね。

 

さまぷーさんから「フィッティングは経験値って重要なんでしょ」と質問されました。「そう、延べで4000人くらい見ているかな」。「色々な症状に対応した経験があるから、その時のノウハウで引き出しが一杯できて、何があっても応用問題として対処できるようになるんですね。時計技師も同じですよ。高い時計をいじる時はビビリますけど、機械式の時計技師として腕を磨くためには、いくつもの時計を壊してしまった経験があります。そうして、分解や組み立ての技術を身に付けたり、腕を磨いているんです」。地道な経験の積み重ねがあって、時計と会話できるようになるんですね。良い話だな〜。ではでは。