クマさんのバイク専科

永遠の課題?、バイクの重さって気になるな〜!

クロモリのフレームってラグ付きで約1900g、フロントフォークが約600gですから1本で2500gくらいです。最軽量クラスのカーボンフレームはフレームが約650g、カーボンフォークが約400gくらいで、1本1050gで実用強度が確保されています。一般的なカーボンフレーム&カーボンフォークで約1500gくらいです。半分の重量で高い剛性感が確保されています。

 

しかし、クロムモリブデン鋼やニバクロム鋼(三元合金)のスポーツフレーム用の軽量チューブは、弾性率24tで溶接後の素材の安定性も優れています。カーボンファイバーのフレームチューブの開発は、スチール製のフレームチューブの性能を指標に、ネジレや破断や剛性などの特性と対比して行われました。

 

0、9mmと0、8mmなどの肉厚のクロモリチューブで組まれたフレームと同等の剛性を、アルミ合金やカーボンのチューブで実現するのは簡単なことではないことが分かってきました。クロモリチューブは優秀で、アルミ合金やカーボンで同等のフレームの剛性や強度を確保するには、かなり大口径にして断面2次モーメントを大きくしてフレームの剛性や軽量性をバランスさせるデザインが採用されるようになります。

 

クロモリの0、9mmから0、7mm〜0、8mmのバテッドチューブで組んだフレームがロードフレームのスタンダードでした。丹下で言えばナンバー2、石渡では022でした。コロンブスだとSLとかSLXに相当するはず。トップ選手が使っているチューブでした。クロモリやマンガンモリブデン鋼のスチールのフレームは、スタンダードゲージのラウンドチューブで十分な剛性バランスを発揮していました。

 

忌野清志郎さんが、スポーツバイクつくばマツナガで、カーボン&スチールラグの接着フレームのプロジェクトMをオーダーしたとき、長く乗ってもストレスにならないフレームの剛性バランスと、バイクの軽さを追求することにこだわったパーツアッセンブルを頼まれて任されました。ベースになるパーツはカンパニョーロのレコードでした。実はこのバイクはオレンジ1号と呼ばれることになるのですが、例のキヨシローさんの高額バイク盗難事件で有名になったバイクです。

 

オーダー確定から完成してキヨシローさんに手渡されるまで1年以上かかっています。シマノ鈴鹿で夕方からのコンサートでデビューすることになり、実はちょっぴり気を使って、シマノの最高峰コンポーネントのデュラエースで組み上げて鈴鹿サーキットへ持ち込むことになりました。フレームが組み上がったのが3週間前、オレンジのペイントを大阪の塗装工場に出して塗り上がってつくばへ届いたのがステージまで4日前、ヘッド小物だけを組んで、鈴鹿サーキットのパドックにクルマを止めてパーツを組み上げて、ステージへ上げた覚えがあります。重さを計ると6、7kgでした。

 

フレームを持った軽さと走りは関係ないという人もいますが、フレーム&フォークの剛性バランスに関係して、バイクの乗り心地に直結する要素です。東レや三菱のカーボン繊維のチューブとスチールラグのフレームで980g、タイムの1インチのカーボンコラムのカーボンフォークが450gで、1430gでした。タイムのカーボンチューブ&カーボンラグのVXRSでフレームが950g、オーバーサイズカーボンコラムのフロントフォークが450gで、合計で1400gですから、オレンジ1号は、当時としては軽量で乗り心地のソフトな、長く乗ってストレスにならないフレームに仕上がりました。

 

その後650gクラスのカーボンフレームが発売されていますが、断面2次モーメントでフレームの剛性を確保するために大口径チューブのフレームになっています。当然フレームチューブの肉厚も薄く成型されて、剛性バランスは高く、乗って硬く感じるパワーロスしにくいフレームに仕上げられています。転倒などでトップチューブにハンドルが接触して、ピンポイント的に力がかかると破断やヒビ割れなどを起こす可能性が高く、フレーム単体重量900g台より、はるかに取り扱いがデリケートになっています。

 

それでもスポーツバイクにも止める性能やスペックの中で、軽量化は永遠の課題になっています。各完成車メーカのロードのフラッグシップモデルの完成車重量はデュラエースのメカニカル仕様で6、8kgから7kg台になっています。

フレーム重量650g、確かに魅力的な数字だけど、果たしてオールラウンドなバイクになっているのかな。最軽量のフラッグシッップバイクを試乗するたびに感じています。もう1000mを1分10秒で走れる力はないし、時速63kmまで加速する力もないけど、立ち上がり加速で、低回転の高トルクで、ぐっぐっとクランクを踏み込んだ時にバイクが伸びていく感じを味わえるのですが、走りがどうも違うのです。

 

フレームの剛性感はあるのですが、フレームの、というよりホイールも含めたバイクの芯を押し出すようなペダリングをすると、バイクが前へ進んでくれるのですが、その感じをつかむまで、力任せでクランクを踏み込むと、芯を外していて効率良く走れていない感があります。セミモノコック製法で組み上げられた、大口径で肉薄の軽量カーボンフレームの剛性が足りないわけではなく、前に進ませるポイントを外して押し出している感じと言ったらいいのかな。スポーク本数の少ないディープリム採用のエアロホイールにもそれと同じような特性を感じます。

 

例えばカーボンリム、リム部分は肉厚がありますが、2辺は薄く成型されて、リムの一番内側にニップルが止められて、1本1本のスポークテンションを上げてホイールの剛性を確保するために、曲げ加工の個所がなく、折れたり破断するリスクが低いストレートスポークが強く張られるわけです。エアロホイールは縦方向の剛性が高く、駆動するパワーをロスなく伝えることができる分けです。本数は18本とか少ないのですが、スポークテンションが高いし、ディープリムの形状により、乗り味としては縦方向の硬さを感じるのです。これをホイールの剛性感だと思いがちです。

 

ダンシングでの加速時、上り坂でも、平地でも、丁寧に芯を外さないように加速しないと、けっこうホイールのたわみを、後輪を引きずるように感じてしまうのです。ホイールの芯をとらえて加速するペダリングへ慣れるまでに、少し時間がかかりました。力任せで加速するのではなく、ペダリングは芯をとらえてバイクを前に押し出す感じ、これが、剛性感はあるけど軽量なフレームや、軽量なエアロホイールで気持ち良く加速したり、パワーロスなくスピードを維持するために必要なテクニックだと思います。

 

個人的な意見ですけど、色々乗ってみて、カーボンフレームは1000g前後がオールラウンドで、力任せで少しラフにペダリングして踏み込んでも加速してくれますが、800g以下のカーボンフレームは、フレームやホイールを含め、バイクの芯をとらえるペダリングが要求されますね。これはあくまでもボクが今まで色々乗ってきた感じですが、6kgや7kg台の軽量モデルも、チューブが扁平加工されているエアロロードも、フラッグシップモデルは剛性の高いフレームが多くなっていますが、バイクの芯をとらえてクランクを踏み込み、バイクを前へ進ませる感覚が重要な気がします。ではでは。