クマさんのバイク専科

効率がいい毎分90回転から110回転のペダリング!

まず、サイクル雑誌などで紹介されている記事を見ると、短期間で効果が表れるような印象を受けてしまいがちですが。そう簡単にシェイプアップできたり、パワーアップできたり、テクニックを身に着けたりすできるようなことはありません。パワーを発揮できる動きを体験するコツやポイントはありますが、その効率的な動きをキープして走るには、筋肉の強化など、地道なトレーニングの積み重ねが必要です。トレーニングを初めて効果をはっきり体験できるまでに、12週間くらいはかかるはずです。

 

繰り返しになりますが、効率を高める体の動きを意識できるようになるコツを意識して、スキルアップや、パワーアップするためのメソッドはあっても、その効率のいい動きを継続してパワーアップして、高速で走れるようになるには、筋力の強化や心肺機能の強化はもちろん、耐乳酸性や乳酸除去能力の向上も同時進行で進め、意識しなくても自然に効率のいい動きをできるようになるまでに時間がかかります。直ぐにとか、今からとか、速くなるのはそんなにイージーじゃありません。

 

全体踏みペダリングを体験するには、背中を反らせるイメージで上半身を意識すると、骨盤は前へ傾斜します。太ももの後側や臀筋の筋肉を動員してペダリングするスイッチが入ります。太ももの前側の筋肉も使って踏み込む「全体踏みペダリング」も使うし、背中をブリッジのように曲げて骨盤を後ろへ傾斜させて、太ももの前側の筋肉で主に踏み込む「前もも踏みペダリング」と切り替えて走ります。そういう、疲労を分散させて走ることを前回は提案しました。

 

「全体踏み」や、「前もも踏み」のペダリングを意識したことのないライダーでも、はっきり2つのペダリングの違いを体験できます。全体踏みは、背中を反らせるくらいのイメージで真っ直ぐに上半身を保ち、自然に体幹の筋肉を緊張させることができます。これで骨盤がほんの少し前へ傾き、太ももや臀筋などの後ろ側の筋肉を動員するスイッチが入って、広い範囲の筋肉で脚を動かしてペダリングできる「全体踏み」を、誰でも体験できます。重いギヤ比に設定しても、体感的には軽く踏み込むことができます。

 

逆に軽く背中をブリッジ状に曲げた姿勢になると、骨盤は少し後ろに傾斜して、ふとももの前側の筋肉を主に使ってペダリングする「前もも踏み」を体験できます。「全体踏み」で軽く踏めた同じギヤ比を重く感じます。ボクは2つのペダリングを使い分けて走って疲労を分散させて走っています。向かい風区間でのスピードキープ、緩い上り坂でのスピードキープ、上り坂など、自分にとって高速走行したり、スピードを維持して走るなら「全体踏みペダリング」で走ります。

 

でも、「全体踏みペダリング」をするスイッチを入れる上半身の姿勢で、骨盤の傾斜を意識できたとしても、骨盤の傾斜を支えて継続する体幹の筋肉も、踏み込むペダリングをしている太ももの筋肉も、そのパワーを伝えるふくらはぎやすねの筋肉も鍛えておかないと、パワフルな「全体踏みペダリング」を長く続けることはできません。いずれのペダリングでも、力強く踏み込みを続けるには、下半身と上半身をつないで連動させる、体幹の筋肉を鍛えておくことが必要です。

 

雑誌などで骨盤の角度を意識して、脚などの広い範囲の筋肉を動員できるメソッドが紹介されています。すぐできるとか、すぐ効果が表れる的なことが書かれていたり、そう言う印象を与えてしまいがちですが、実際にそのテクニックを使うには時間がかかります。骨盤をサドルにかぶせるとか、腰を入れてとか、色々な表現で、骨盤の角度を意識して、広い範囲の筋肉を動員するスイッチを入れるコツが紹介されています。

 

確かに骨盤の角度を意識することで、筋肉の動員できる範囲を広くする方法を知ることができて、確かに短い時間なら大きなパワーを発揮できて、即効効果でパワーアップするコツを会得したように思わせてしまいがちです。繰り返しになりますが、そんなに簡単にはパワーアップできません。広い範囲の筋肉を使うコツは意識できても、でもそれはパワーアップではなく、いまある筋肉で限界に近いパワーを短時間発揮する方法を知っただけで、やはり動員する筋肉群を鍛えないと、長く続けることはできません。

 

日常的に「全体踏みペダリング」したり、腹筋や背筋や腸腰筋などを時間をかけて鍛えていないと、パワーを発揮した分、早く疲労しやすいことも忘れてはいけません。より大きなパワーを発揮できる「全体踏みペダリング」を走りへ取り入れて行くには、骨盤の傾斜に関係している上半身の姿勢を意識して、臀筋やふとももの後ろ側の筋肉を動員する動きのスイッチになる、骨盤の傾斜も意識して、それをキープするために、体幹の筋肉の強化がより必要になります。

 

毎分80回転前後のケイデンスになるギヤ比の負荷は、ヒューマンパワービークルとして、脚の筋肉への負荷が大き過ぎます。筋肉内に乳酸を爆発的に発生させてしまう踏み踏みのペダリングになリがちです。比較的低いクランク回転数で、高トルクの大きなパワーを発揮できるケイデンスが毎分85回転から90回転あたりです。ロングのトライアスロンで、パワーのあるトップライダーが、180kmのコースで、平均時速40kmから45kmの走行で、このあたりのケイデンスを採用していることもあります。

 

比較的低いケイデンスなので、トップライダーでなくても採用できそうなケイデンスです。筋力や有酸素運動能力や無酸素運動能力、乳酸除去能力に見合ったギヤ比でペダリングすれば、脚の筋肉が比較的ゆっくり収縮するので、有効なケイデンスです。脚を速く動かすことが筋肉への負担になってしまうビギナーの段階では有効なペダリングですが、まだまだ乳酸が発生しやすい負荷になりがちで、回転数をより高く保つペダリングに慣れるメソッドを経験して、90回転から110回転、できれば120回転のケイデンスで、より高く保って走れるようになることを目指しましょう。

 

そのときケイデンスの高いペダリングを実現して、効率良く走れるようになるために、壁になるのが、有酸素運動のミドルからハイレベルの運動を続けるための、心拍数の上昇と呼吸数の上昇の苦しさです。ぜいぜいハアハアして来る苦しさで、これはいけないこと、無理をしているのでは、継続できないのではと思い込んでしまうことです。人間の体には、鍛え方や先天的な要素でレベルが違いますが、高いレベルの有酸素運動で大量の酸素を消費したり、無酸素運動で大量の乳酸を発生させて、それを回復する段階で、酸素負債を背負い込める能力があります。

 

疲労を回復させながら、運動強度を高いレベルで継続するために、体が自然に順応させスイッチが入ります。毛細血管を広げ、心拍数を増やして血流量を増やして、隅々まで酸素を送り込みます。同時に、心臓に帰って来る血液に、有酸素運動の老廃物の二酸化炭素や、無酸素運動ミックスの状態で発生した乳酸を肝臓へ運び出し、血中の乳酸濃度を低下させます。これが乳酸除去能力です。体内に酸素を取り入れるために呼吸数を増やすと同時に呼吸を深くするようになります。これが苦しさとなるのです。

 

でもこの呼吸数の上昇や心拍数の上昇の苦しさに、ある程度のレベルで慣れることが必要です。思い出してください、ケイデンスが低い踏み踏みのペダリングで乳酸が蓄積して踏めなくなった、筋力的な負担が大きい疲労からの回復には、運動強度を低下させてペダリングして20分から30分もかかります。ところがケイデンスを高く保って走った苦しさからの回復には、5分も運動強度を低下させて走れば、呼吸数も心拍数も低下して踏めるようになります。ケイデンスを高く保って心肺機能に依存してペダリングした方が効率はいいのです。

 

だから、90回転から110回転、できれば120回転の範囲の、自分にあったケイデンスを保ってペダリングして、多少苦しく感じても、苦しさに慣れて、しかも継続できる運動強度(スピード)を見つけることを意識したトレーニングが必要になります。高いケイデンスのペダリングの脚の筋肉の早い収縮に慣らして、無理なく高いケイデンスで走れるようになるトレーニングは、インナーギヤでスタートして、ゆっくり楽に回せるクランク回転数より、そのギヤ比よりフリー側で1段軽い、足を軽く踏み込めるギヤ比を意識的に選んでペダリングすることです。

 

ケイデンスが上がると、呼吸も心拍数的にも上昇するので、その苦しさにも慣れる効果があります。苦しくても回復が早くて効率がいいことを信じて、1日中、回せる脚を作るトレーニングへ取り組んでもいいと思います。4週間、週末に4時間ずつ体験すると、だいぶ楽に回せるようになると思います。心肺機能に負荷がかかって若干苦しく感じても、実際には疲労を残しにくい効率のいいケイデンスのペダリングにチャレンジしてみてください。ではでは。