クマさんのバイク専科

Ωのスピードマスター、チッチッチッ!

腕時計がこんなに気になることは久ぶりです。もちろん日常の仕事中に誰もが身に付けるものだけど、こんなに、一緒に経験した物語を壊れていたΩが持っていたことには気が付きませんでした。真っ黒な文字盤に3つの小さなサークルがあるクロノグラフを見るたびに思い出が浮かんできます。ヨーロッパでプロロードチームをマネージメントしていた頃のこと、トライアスロンのナショナルチームのサポートスタッフや、バイクコーチとして世界中を飛び回っていた頃、このΩは大活躍していました。

 

シドニーオリンピックの前年に、ベンドが伸びて腕から飛んでしまって、壊れていたのが、黒姫高原るんるん合宿で知り合った時計職人のTさんの手を煩わせて、ついに治ってきました。外観的にはベゼルに傷が付き、ガラスが割れ、針の位置がズレ、サビも発生していたり、色々消耗したパーツもあったようです。ばらばらに分解されて洗浄液に漬けられて、組み戻してもらい、ピカピカになって帰って来ました。

 

18年くらい昔、インデアンスの拠点のオークランドシティで開催された世界選手権トライアスロンからの帰り道、トランジットしたカナダの空港のデューティーフリーショッパーズで手に入れた、Ωのスピードマスターの自動巻でした。1999年のトレーニングの指導中に腕から飛んで、路面へ叩き付けられて壊れたままになっていたものを、黒姫合宿に参加されたTさんに預けて数ヶ月、Ωから補修パーツを取り寄せてもらい、こつこつ分解して、組み戻してくれたのです。

 

しかも、外観もバフがけされてピカピカに仕上げられていました。Ωのスピードマスターといえば、アポロのスタッフが宇宙に持って行った腕時計として知られていますが、あれは手巻きの機械時計でした。アニバーサリーモデルのパッケージにはマジックテープ止めの宇宙の船外作業用のリストバンドがおまけに付いました。手巻きのアポロ計画採用アニバーサリーモデルが発売されています。

 

そう、物語のある手巻きのモデルは確かに魅力的でした。実はそのアニバーサリーモデルもデューティーフリーのショーウインドにありました。欲しかったです。でも、手巻きモデルです、定期的に手でリューズを回してパワーリザーブしないと時計が止まります。自分がその時計を管理できるかを想像してみました。ゼンマイを巻かなければ止まる時計、パワーリザーブした残りを表示する手巻きの腕時計もありますが、スピードマスターには設定がありませんから、時計を止めないためには定期的に巻かないといけません。リューズをどのくらい巻けば良いのかも分かりません。

 

説明書を見せてもらいましたが、ダイバーズウオッチではないこと、生活防水レベルの防水性があること、素材がステンレス製であることくらいが簡単に書かれていました。グレーのプラスチック製の製品保証カードが入っています。きっと時計は止まりまくるな、いちいち時計を見たり、テレビの時間を見て時刻を合わせることになって、面倒になって使わなくなる予感が・・・・。これはダメだなと思いました。すると売り場のお姉さんが、自動巻もありますよと持って来たのです。

 

自動巻とは何とも便利そうな響き、腕時計を初めて買ってもらったのはセイコーの自動巻の防水モデルでした。毎日腕に付けて学校へ通った記憶が蘇りました。なんて言ったって自動巻だから、身に着けていればゼンマイを巻く必要がなかった気がします。そこで自動巻のスピードマスターに決めました。当時はドルが安く破格の安値で手に入れることができました。でも、自動巻だろうと機械式時計のコンディションを保つには、手入れが必要なことも知りませんでした。

 

トレーニングでこの腕時計は役に立ちました。アナログ時計の針は視覚的に残り時間を感じられます。セイコーのストップウオッチのデジタルの数字の表示と違って、頭で計算しないで残りの時間が分かります。小さな数字や文字盤も見えましたしね。汗だくでΩのストップウオッチのボタンを押したり、リューズを動かしたりしました。あげくの果てにステンレス製の重い純正バンドを外して、日常着脱しやすいからと、潮来のトライアスロンのとき、地元のスーパーの時計屋さんで、ゴムのように伸縮するバンドへ交換しました。筑波大のトライアスロン部のトレーニングの指導中、腕を振った時、時計が飛んで行き、路面にハードヒットして壊れてしまったのです。

 

それまではメインで使う時計になっていましたが、旧日本シイベルヘグナーがΩの輸入代理店でした。江戸から明治にかけての、日本が江戸幕府の支配の時代から変革するころは、横浜で武器商人として活躍していたスイスの貿易商社です。現在はスオッチジャパンになっています。銀座の修理できる場所へ持って行くと、何と修理代と整備代金は10万円を超えることが分かり、どうするか迷って、そのまま引き出しに10年以上しまい込まれていたわけです。

 

修理から帰って来た時計を耳に押し付けると、やっとチッチッチッと機械が動いている音がかすかに聞こえました。パーツ交換や注油で改善されているのでしょう。前はもっと金属が接触しているような音が大きくて、どうかなっていたんでしょうね。Tさん本当にありがとうござました。素敵なパートナーさんとつくばのショップに来ていただき、ありがとうございました。また2017年も一緒に走りましょう。タイムのブラックフェイスのスカイロンはカッコいいですね。ではでは。