クマさんのバイク専科

フルブレーキングとスピードコントロール

当時はカンパニョーロ、シマノ、サンツアー、どのメーカーのブレーキキャリパーが利くか試す、ロードレーサーでのブレーキングについて考えさせる雑誌の企画がありました。チューブラータイヤは23mmのクレメンのクリテリウムでした。ホイールはマヴィックのGP-4というアルミリムの32本スポークの手組みのホイールです。

 

前後輪とも7、5気圧で、体重が72kg、接地面積はバイクに股がって体重をかけてタイヤのトレッドゴムのスタンプをとると、だいたい小指1本分の面積でした。サドルの真ん中に座ると前輪が4分、後輪に6分の体重がかかっていまいた。フランスの自転車のライディングテクニックの教則本を見ると、時速20kmからのフルブレーキングをたくさん体験して、ブレーキングの基礎を身に着けてから本格的なトレーニングをすることと書いてあります。

 

教本どおりに腕を伸ばして、腰をサドルの後ろへ引いて、時速20kmからのフルブレーキングを体験してみると、ブレーキの前後の強さのバランス、後輪荷重、後輪タイヤを滑らせないコントロールなど、確かにこのメソッドの中にブレーキングテクニックのエッセンスがふくまれているな、そうだなーと思いました。あまり考えることも無く、何となく自分流にブレーキングして、過ごしていたことが危険なことだったんだと気付かされました。

 

26歳のとき、時速20km、30km、40km、50km、60kmからのロードバイクのブレーキングの見直しのトレーニングをどこでやったかというと、伊豆の日本サイクルスポーツセンターの競輪学校の敷地内の登坂コースでした。強烈な上り坂は競輪選手の筋力強化にも使われている場所です。見学したことがあります。数台のピスト車に乗った競輪学校の選手が横一線に並び、登坂コースの頂上から200m離れた、平らな端から一斉に標高30mか40mの頂上へ向かってスタートします。上り坂が100m地点から始まります。

 

急坂で一気にスピードは落ちて全員が踏み踏みのペダリングになります。脚の力だけでなく上半身も使って、ケイデンスは30回転以下になり、固定ギヤのチェーンはピーンと張り、1踏み1踏みピスト車からギシギシ音が出そうなほどです。時速5kmくらいで、グイグイ踏み込みながら、この25%を越える激坂の登坂コースを何度も何度も上っています。シングルブレーキ装備でゆるゆると下ってきては再スタートします。高負荷のペダリングで使う筋肉のみがナチュラルな高い負荷で鍛え上げられます。

 

ブレーキキャリパーやブレーキパッドの特性をチェックしたり、フルブレーキングでストッピングパワーの大きさをテストするコースとして、この激坂を使っていました。頂上から自然落下で下ると、100m地点で時速60kmに到達します。上り坂はインナーギヤ41T×ローギヤ24Tで頂上まで上り、踏み込まないで下り、スピードメーターで時速60kmを確認したらフルブレーキングして、最短距離で止まれるように左右のブレーキレバーを操作します。クマジジイの現在のバイクは、右ブレーキレバーが後ろ、左ブレーキレバーが前の設定です。

 

ロードレースやツーリングでダウンヒルでの時速60kmからのスピードコントロールはあります。止まらないと危険な場合もあるので、時速60km、50km、40km、30km、20kmからのフルブレーキングも1日に60回近く試しました。ブレーキキャリパーやブレーキパッドの特性が速度の変化と制動距離の伸び方などの変化で明らかになります。最近では、カンパニョーロのカーボンリム用のブレーキパッドとデュアルピボットのスケルトン構造のスーパレコードのキャリパーの組み合わせは、時速10kmの一定間隔で速度が増して行くと、一定の間隔で制動距離が伸びて行きます。速度域によって制動距離が不規則に伸びる、速度で利きが大きく変化するということはありませんでした。

 

シマノの最新の3支点のデュラエースのデュアルピボットブレーキとシマノのカーボンリム用のブレーキパッドの組み合わせより、カンパニョーロは各速度域で、ブレーキングを開始してからバイクが止まるまでの制動距離は一定な感じで長くなります。利きを予想しやすいスピードコントロールしやすいブレーキです。このバイクを停止させるまでのブレーキの利きの差を、カンパニョーロとシマノのストッピングパワーの差として感じるのです。一般的にはシマノの方が利くブレーキと言う表現になります。シマノとカンパニョーロユーザーで、コーナーリングやブレーキング開始のタイミングが違ってくるほどの差です。

 

腕を伸ばして腰をサドルの中心より後ろまたは中央へ移動して、ブレーキングで慣性が働き始めた時に、上半身が前へ出ないように支えます。腰を後ろへ引いて後輪に荷重をかけてタイヤをスリップさせにくい効果があります。ビギナーライダーのブレーキングは、前5分、後ろ5分の力でブレーキレバーを引くことが多く、腰の位置も後ろへ引く動作をして後輪荷重を瞬時にできていないので、時速20kmや30kmでも後輪をスリップさせてフラットスポットを作りやすいのです。

 

最初は前後ブレーキレバーとも、5分のバランスのブレーキングでいいと思います。ブレーキングを開始する前に腰をサドルの後ろへ移動することを意識して、走行中にブレーキングする時は、自然に腰の位置を移動できるようにしてください。高速域からのフルブレーキングは、もっとも制動距離が短くなるように、そして後輪タイヤをスリップさせてフラットスポットができないよう、腰を後ろへ引いて、前7分、後ろ3分のブレーキレバーの引きのバランスでブレーキングを開始します。

 

ブレーキパッドがリムに触れて利き始めると、バイクには慣性の力が働き、前輪荷重気味になって、前輪タイヤを路面へ押し付ける方向に力が働き、スリップしにくくなるので、前ブレーキをより強く利かせることができます。ブレーキングを開始すると、後輪タイヤは浮き上がる方向に力が働きます。後輪タイヤの路面とのグリップ力を感じながら、スリップさせないように、クルマのABS システムのように、微妙に右ブレーキレバーの引きの力をコントロールして、最短距離で止まるようにブレーキングします。スピードコントロールはダウンヒルやコーナリングで、曲がったり安全なスピードに調整するために行います。ブレーキパッドをリムに押し付けてブレーキレバーの引きを調整します。どのスピード域でも一定な間隔で聞くブレーキが扱いやすいですね。

 

シマノのブレーキの方が、ぎりぎりまでスピードを落とさずにコーナーの手前まで進入して、前後のブレーキレバーの引きの強さを変えて、タイヤをスリップさせないぎりぎりまで前後のブレーキを利かせて、急激にバイクのスピードを落として、コーナーを素早くクリアできます。この登坂コースでフルブレーキングするようになって、右前、左後ろから変更しました。時速60kmからフルブレーキングすると、前後のブレーキが利き始めると後輪の荷重が減ってスリップさせやすいので、右利きですから、後ろブレーキを細かく操作できるように変更しました。

 

時速60kmからのフルブレーキングやスピード今とロールを体験すると、快適に安心して使えるブレーキが見えてきます。シマノの105グレード以上のブレーキキャリパーに純正のパッドの組み合わせがいいですね。デュラエースとアルテグラはエクセレントン利きです。105と同じぐらいのストッピングパワーを発揮するのが、カンパニョーロのコーラスクラス以上のスケルトンブレーキに純正ブレーキパッドの組み合わせです。体重があるライダーはスイスストップのストッピングパワーが大きいイエローのモデルがマッチしますね。スラムレッドのキャリパーは105クラスのストッピングパワーを発揮します。ではでは。