クマさんのバイク専科

100年以上の歴史に空白の勝者の意味するもの!

スポーツビジネスコンテンツにプロアマ問わず、ドーピングはつきものなのでしょうか。オリンピック種目でも、プロスポーツでも蔓延していて、そんな中で勝つことに必要なもので、必要悪だったのか。世界選手権、ワールドカップ、オリンピック、大陸別選手権では、多様化、そして巧妙化するドーピングに対し、いずれの大会でも競技団体によるチェックは厳しくなっています。

 

しかし、プロリーグの主宰者や管理団体は、独立性や公明性が問われる検査団体をコントロールしている分けです。リーグの人気や存続にも関わるダークな部分を、果たして公正にチェックを行って100%明らかにしているだろうか。医師の診断を受けて、競技団体に申請して、許可を得てぜんそくの治療薬としてのホルモン剤投与とか、それに、サプリメントの摂取とあらゆる手法のドーピングとの境目ってどうなんだろうか?。

 

麻薬。血液ドーピング。エリスロポエチンによるヘモグロビンの増加。興奮剤の使用。筋力増強のためのホルモン剤の投与。遺伝子操作。治療薬などの医薬品開発で生まれた製品やノウハウを転用して、あらゆる手法のドーピングやマスキング方法を開発した研究者や企業がいて、それを利用するチームや選手がいるわけで、勝つこと、いいパフォーマンスをすることが優先していないか。

 

取り締まるための検査方法も開発されていたちごっこは続いています。ドーピング禁止のルールがあるから、悪いことだとか罰則を適用されるという認識はあっても、その順位は低くなり、スポーツビジネスを上手く進めるには目をつぶっていいということなのだろうか。アメリカの大リーグのプロ野球選手、特にホームランバッターのモラルハザードが低過ぎたのか、経営側が容認していたのか甘く考えていたのか。年間の試合数が多いとは言え、60本のホームラン数がターゲットだった時代がありました。大リーガーもドーピングの検査対象になり、食品医薬品局などのターゲットになりました。

 

サプリメントに禁止薬物が添加されていたなど、故意じゃないといういいわけやカミングアウトもありましたが、ドーピングが明らかになって、現役引退や試合出場停止、記録取り消しに追い込まれています。人気スポーツのアメリカンフットボールやアイスホッケー、バスケットボールの世界でも、学生スポーツからドラフトにかかり、莫大な契約金、高収入に直結するプロの道へつながる、ハイリスク・ハイリターンを承知で、ドーピングは蔓延していました。一部のトレーナーやコーチ、スポーツジムの裏ルートによる、若年層からのテストステロンによるタンパク質同化作用による筋力増強は、継続使用が命や健康に関わる問題化しやすく、早くから規制がかかっているにもかかわらず、マスキング技術の進化などで現在でも手法として採用されていると言われています。

 

ソビエト連邦の倒壊や東ドイツと西ドイツとの統合などで、コーチの職を失ったひと達が、ヨーロッパ各国やスポーツビジネスの盛んなアメリカへ、ドーピングの技術とともに拡散しました。6日間レース、ロードレースなどの自転車競技の世界でもドーピングは蔓延していました。ヨーロッパで3年プロチームを運営しているとき、製薬メーカーのセールスマン、ドーピングを指導できるデータを持ったドクターや管理スタッフからの売り込みがありました。年間契約してオフシーズンからチームを指導すると言うのです。

 

ドーピングの種類と効果と副作用に付いて、チームドクターにあらゆるドーピングの可能性を調べてもらいました。日本選手はそれをやってくる選手に対して、どう対応すればいいのかのヒントになると思いました。450ワットから800ワット近くを1時間発揮し続ける選手がライバルですから、手の打ちようが無いというのが正直なところですが、相手の正体も知らないで戦うよりは、知っておいた方がいいと思いました。

 

当時のプロチームや個人で、ナチュラルマッスルやドーピング無しで戦っていたのは少なかったと思います。ちょっとしたクリテリウムですら優勝賞金が高額だったので、UCIのドーピングコントロールが行われているリスクを承知で、興奮剤などを使っている選手がいました。もっとメジャーなレースでは入念に準備して、ドーピングチェックを受けてもレースの時期には尿に排出されないテストステロンの量や投与の時期のコントロールとかもおこなわれていました。

 

チェックする側の医師や医療技術者、スポーツ管理団体がそんなドーピングの情報を知らないわけは無く、IOCもUCIも本気でドーピング撲滅を目指してやっているんじゃないんだなというのが正直な感想でした。かろうじて、IOCがオリンピック開催以前、開催後のメダリストの尿と血液の継続的な検査をし始めてから、少し本気を出したなと思いました。UCIも選手の居所を登録して抜き打ち検査を始めましたが、摘発していたらレースが成立しなくなってしまうし、イベントそのものがスポンサー撤退なども含めて衰退してしまいますから、本気なんですかね。

 

貧血の治療薬のエリスロポエチン、体内にナチュラルに存在する物質です。医師の管理下のエリスロポエチンの投与と適度な運動で、ヘモグロビンを増やした状態のフレッシュな自己血液を保管して、レース開催中に血液ドーピングしていただろうから、本当のところ、血栓による健康の問題とか、どうなっていたんだろうと想像すると恐ろしくなります。日本選手はビタミン剤を入れた点滴をレース後に受けて、疲労した内蔵に負担をかけないで回復を計っていた程度のナチュラルぶりです。

 

しかし、ツールの100年を越える歴史のリザルトに、7年もの空白を作ったランス・アームストロング、そのランスを上廻るパフォーマンスで勝者となったはずのコンタドールもドーピングの陽性で空白を作るという、ほんの数年前の暗黒時代があってのプロ自転車レースです。今でもチェックをかいくぐる方法の開発とか、遺伝子操作とか、その噂は絶えません。

 

なぜドーピングはいけないことなのか。ドーピングチェックはレースの前後や開催中に頻繁に実施され、そして、深夜や早朝、選手の日常の時間にも行われて以前よりはクリーンな状況になっていることを想像できます。上りセクションでやたらに踏んだ選手が、翌日のステージでも大活躍というシーンは少なくなって、ワイドギヤの設定で、筋肉に深いダメージを受けないように、心肺機能に負荷をかける、回復の早い走り方を選択するようになっています。ナチュラルで戦っている日本人ライダーには有利になりました。6月、そんな根本的なことを考えさせられる時期がやって来ました。2017年のツールでは何が起こるのかな。

 

機材のトッピックスとしては、25mmや24mmの太いチューブラータイヤと、エアロダイナミクス効果があるという、太いリムのホイールがどうなるか。ディスクブレーキやダイレクトマウントの使用率はどうなるか。ディスクブレーキ対応のホイールやカーボンフレームの変化。ニュートラルホイールの供給がどうなるのか。油圧ディスクブレーキのバイクのスピードコントロールのテクニックの変化。電動メカのシェアやシンクロモードの採用。パワー測定クランクとサイクルコンピュータの組み合せがどうなったかなどが注目されます、ではでは。