クマさんのバイク専科

バイクシューズの3穴の位置が変わり始めている

 

ロードペダル向きのバイクシューズ、カーボンソールもエンジ二アプスチックのソールも、クリートを固定する3つの穴の位置の構造や前後位置が、もっと足を安定させて踏みたいと、ライダーからの要望で数年前から変わり始めています。ロードペダルのプラスチック製のクリートをソールに固定する3穴の位置で、クリートを固定できる範囲が変わり、踏み込む足のフィーリングや、脚の筋肉にかかる負担の大きさや、負担がかかる位置が変わります。

 

ビンディングペダルの原点だったフランスのスキービンディングメーカーのルックのPPシリーズ、少し大き目のプラウチック製のデルタクリートを取り付ける、バイクシューズのソールに開けられた3つのネジ穴の規格が、そのまま採用されているので、ルック3穴と呼ばれていました。シマノ、タイム、スピードプレイ、カンパニョーロのビンディングペダルのクリートが、ルック3穴に互換性が保たれました。

 

ロード用のビンディングペダルのバイクシューズのソールには、現在もルック3穴が採用されています。シマノのバイクシューズの中には、ロードまたはサイクリング向きのSPDペダルの金属製のクリートを取り付ける、2穴が追加された兼用ソールのモデルもあります。ロード用のビンディングペダルのクリートは、いずれも前後方向へスライドできる構造でしたから、ルック3穴はメーカーが設定した位置に開けられて、固定ボルトをねじ込む雌ネジが埋め込まれていました。

 

母指球とペダル軸の中心を一致させるような、爪先よりにペダル軸の中心が設定された場合、足首の動きをペダリングに反映させて、ペダル軸が描く円の接線方向へ足を追い出して、ペダリングの効率を向上させる事ができます。反面、足首を動かして、踏む力を支える膝から下の筋肉には負担がかかりやすい設定と言えます。サイクリングの教本にはこの設定がよく紹介されていました。しかし、最近のレース現場でクリートの位置をウオッチングすると、クリート位置が後ろへ引いているライダーが多くなっています。

 

クリートはスライドできる限界まで後ろへ下げるとそれ以上は移動できません。その状態より後ろにして、ペダル軸の中心を、母指球の後ろへ移動して、踏み込む足を安定させたいと感じても不可能でした。プロチームの場合はバイクシューズもスポンサードの対象になります。コンポーネントパーツ供給メーカーが、バイクシューズも作っている場合は、ビンディングペダルと共にバイクシューズの縛りが発生する傾向になっています。

 

カーボンソールの形状やサイズはストック状態から変更できませんが、アッパーが熱成タイプのバイクシューズなら、アッパーはある程度足の形に合わせられますし、スペシャルラボがあれば足の形を測定して、アッパーをオーダーメイドしているようです。ビンディングペダルの踏み味を大きく変えてしまうクリートの固定位置は、選手の中にはソールに穴を開けて、雌ネジを埋め込んで、クリートの位置を後ろへ引く加工をしている選手もいました。ソールに内蔵された雌ネジの金具のスライド幅を広げる加工をしているケースもありました。1mmとか2mmの違いが大きいので、この加工をいているバイクシューズを使っている選手はけっこう見かけました。

 

来年モデルのバイクシューズがスポンサーから提供されるのは、サイズ合わせのために市販モデルが秋に供給されて、選手の要望に合わせてバイクシューズを製作できるラボがある場合は、カーボンソールの3穴の位置の調整が行われたり、アッパーの成型やオーダーメイドが行われて春先にスペシャルシューズが供給されます。選手からの要望の中で市販品にフィードバックされる部分があります。マヴィックは、もっと踏み込む脚を安定させるために、クリートを後ろへ引きたいという要望を受け入れて、いち早く薄いカーボンソールの3穴の位置を、内蔵された雌ネジの金具を数mm後ろへスライドできる溝をつけて市販しました。

 

レースの現場で足元の設定を見てみると、クリートをめいっぱい後ろへ引いて足を安定させてペダリングしている選手が増えています。バイクシューズのソールの3穴の位置は、今後、後ろへ引ける構造に変更されると思っていましたが、色々なバイクシューズメーカーが対応し始めています。特にシマノのバイクシューズは、ソールに内蔵された雌ネジの金具の位置を大きくスライドできるようになっていますし、同じサイズのバイクシューズよりデフォルトの穴の位置が後ろに設定されていました。

 

昔は、親指の足の根元のもっとも膨らんでいる関節の骨のカカト側の骨の先端が母指球と呼ばれて、ペダル位置の中心との位置関係を調整する指標になっていました。サイクリングの教本では、足の裏を水平の状態で母指球とペダル軸の中心を一致させるというものでした。多くのトライアスリート、ロードレーサー、競輪選手、一般ライダーのフィッティングや自分自身のペダリングのクリート位置の調整の経験から、母指球と小指の根元の小指球との間にペダル軸の中心がくると、踏み込む足が安定して、膝から下のすねやふくらはぎの筋肉が、足首を支える負荷が軽減されて楽に強くクランクを踏み込めます。

 

個人差や流行がありますが、踏み込む足の安定感や脚への負担を考えると、ペダル軸の中心は、母指球の位置より2mmから3mm後ろがいいと思います。しかも、ペダリングをチェックして、踏み込むフェーズでの足の裏の傾きを配慮して、足の裏が傾いた状態のときに、母指球の位置より2mmから3mm後ろになるように設定するとベストでしょう。実際には、母指球の位置はピンポイントで分かるわけではないので、指先で探って、ここと思われる位置にホワイトの修正ペンで、ソールに印を付けて調整の目印にして、踏み込んでいる時の足の裏の角度にして、ペダル軸の中心の位置が印の位置より2mmから3mm後ろになるようにクリートの前後位置を移動します。

 

実際に踏み込む足の角度を基準にクリートの位置を設定します。走って見てどうだったかを頼りに、クリートの位置を1mm単位で前後に動かして、平地や上り坂で踏んだ時の膝から下の筋肉への負担を感じて、微調整してベストポジションを見つけます。基準の3穴の位置も後ろへ設定される傾向になっていますが、クリート位置の移動の自由度を広げる、3穴の位置の移動幅のあるバイクシューズは、5mmくらいの移動幅ですが、踏み込む足を安定させたいライダーに好評のようです。ではでは。