クマさんのバイク専科

サドルの位置の最適化で本来のパワーを発揮する!.パート3

 

サドルの高さや前後位置の設定は、最適な位置から多少ズレていても、違和感があってもクランクを踏めて回せて走れてしまうので、どの位置がいいのか誰もが迷いやすい部分です。違和感を感じても、どう変えると最適化できるのかわからないのに、工具を持って走り、サドルを上げたり下げたり、前後に移動したりして違和感を解消できないで、かえってサドルの設定に迷ってしまうライダーもいます。

 

迷わせる要素としては、サドルの高い設定でペダリングすると、余裕のあるうちは、下死点近くで足が爪先立ちで踏み下ろし、膝関節が屈曲や屈伸の動作をしやすい理想的な角度に曲がって、疲れていない間は問題なくペダリングできます。しかも、足が伸びて大腿四頭筋にストレスがなく、気持ち良くペダリングできるので、このサドルの高さでいいと思いがちです。膝から下の筋肉群が爪先立ちの足の傾きを支えて踏み込んで疲れてくると、カカトが下がってきて、膝関節が開いて脚が真っ直ぐに伸びて、さらに大腿四頭筋が伸ばされても気持ちがいいと感じるので、やはり、このサドルの高さの設定でいいと思ってしまいがちです。

 

ところが、脚が伸び切った状態で踏み込むペダリングを続けていると、膝関節が180度近くに大きく開くと、脚を下死点へ踏み込む伸展から、上死点へ戻す屈曲への動作の移行がスムーズではなくなり、ケイデンスを上げにくくなります。1時間、2時間走り込むと、膝関節周りの筋肉や靱帯、膝から下の筋肉群にストレスが集中してきて、効率良く踏み込めなくなります。しかも、脚を踏み下ろすたびに座骨が踏み込む方に傾き、それを支える体幹の筋肉に余計な負担をかけて、腰や腸腰筋や背筋の疲労集中の原因になったりします。

 

関節や筋肉や靱帯の違和感や痛みの発生の原因になることもあります。脚の長さを測って統計的に出た係数や膝関節の角度は参考にしますが、クリートに位置を最適化したバイクシューズをはいて、バイクに股がって、脚の長さを基準にサドルの高さを決めます。サドルの中央に座って、下死点近くのもっとも遠い位置にクランクを止めて、脚をペダルにセットします。脚が真っ直ぐになった状態で、足の甲を水平になる高さに固定します。サドルの沈み込み量、ペダル軸の中心から踏み面までの高さ、クランクの長さ、バイクシューズのソールの厚さ、脚の長さなど、全ての要素を配慮して、踏めて回せるサドルの高さに設定できます。

 

百哩大王のメンバーの場合は誰もが距離を走り込んでいるライダーなので、サドルの高さや前後位置の重要性は気にしていると思います。今回のセミナーに参加したライダーの多くは、クランクを下死点へ踏み下ろした時に、膝関節を広げて脚を真っ直ぐにして、大腿四頭筋などの筋肉を伸ばして気持ち良くペダリングしたいと、サドルの高さの設定の傾向としては、踏み込むペダリングで高目の設定のライダーを多く見かけました。

 

確かに少しサドルが高めの設定は、元気なうちは脚が伸びて気持ちいいのですが、爪先立ちのペダリングになって、膝から下の筋肉群を使って足の角度を支えてクランクを踏み込むので疲労してきます。そうなると、だんだんカカトが下がって脚が伸び切った、膝関節が180度近くに開いた状態で足を踏み下ろすことになります。踏み込む足の傾斜でカカトの位置は上下に100mm近く動きます。しばらくの間なら膝から下の筋肉群で、カカトの位置を高く、爪先立ちの状態で足を支えて1時間から2時間はペダリングできてしまうのです。

 

でも、爪先立ちのペダリングを続けると。膝関節周りの筋肉に負荷がかかり疲労が蓄積して、痛みや筋肉の硬直が発生します。カカトの位置が変化すると、膝関節や股関節の可動域が変化します。疲れてきてカカトの位置が下がると、脚を下死点へ向かって踏み下ろした時に、膝関節は開き気味になって、上死点へ向かって足を戻す時に、屈曲させる動作への移行が遅くなり、ケイデンスが上がりにくくなります。今回セミナーに参加のライダーの場合は、最適なサドルの高さより5mm前後とか、中にはルックのマストタイプのカーボンフレームのシートチューブを切りたくないと、20mmも高いままにして走っていたライダーがいました。

 

さすがにエアロ形状のシートポストを取り外して、スペーサーを抜き取って、20mm、何とかサドルを低くしてペダリングしてもらいました。お尻の痛みも、股関節や腰の周りの筋肉の過緊張による痛みやストレスから開放されて、クランクを踏めて回しやすくなったと思います。ルックのカーボンシートポストは、ヤグラの構造が特殊で、固定ボルトの位置を大きくスライドさせて、ヤグラを固定する位置を25mm近く移動できます。サドルの10mmの移動で、シートチューブの角度の1度に相当します。パワー発揮できる腰の位置にサドルを移動できる素晴らしい構造です。ドロップバーの上の直線部分を握ってもらい、腕に制約されることなく腰の位置を移動できるようにします。毎分80回転できる、少し重い負荷でペダリングしてもらい、自然に腰が移動した位置が、踏めて回せる腰の位置です。その腰の位置をサポートするように、サドルの前後位置も調整しました。

 

前後位置の調整で、股関節周りの筋肉の詰まり感による太ももの動きの制約から開放して、ケイデンスも自然に上がり、踏み込みもスムーズになります。サドルの上の面の角度を、ペダリングする姿をチェックして、尿道や座骨の圧迫される部分を見極めて調整します。座骨のエッジが触れるサドルの中央部分を水平にセットすると腰が安定します。ではでは。