クマさんのバイク専科

バランスでヴェロフレックスのクリテリウム!

乗り心地がよくて、グリップ力がよくて、耐パンク性はまあまあの、手に入る究極のチューブラータイヤはどれだろう?。高校時代に使ったのはイタリアのクレメンの天然繊維のコットンコードと、絹コードでラテックスチューブのタイヤでした。ウオルバーやゴミタリアの練習用タイヤと呼ばれた、ブチルチューブ入りの物もありましたが、クッション性やグリップ力など、決戦用タイヤとはあまりに性能が違いました。これは乗り心地がいいなーと思ったのは、決戦タイヤの中ではもっとも安いモデル(高校生には高かったけど)で、凄いと思ったのは、決戦タイヤの入門モデルだった、当時はイタリアで生産されていたクレメンのコットンコードのクリテリウムです。

 

重量は240gから260g、呼び寸法は700×22C相当で、海外では28インチと呼ばれています。タイヤの太さは実測で21、5mm、推奨空気圧は6気圧から8気圧で使えて、1本6500円から7500円くらいで手に入れていました。天然素材コードのチューブラータイヤで凄いと感じたのは、当時、上野の横尾双輪館が常に在庫していた、クレメンのコットンやセタの決戦チューブラータイヤでした。クレメンのピスト用のオールラウンドの、21、5mmで165gのコットンコードのナンバー3などのチューブラータイヤも置かれていました。

 

ミシュランの23mmと25mm、ヴェロフレックスの23mmのクリテリウム、25mmのルーベ。ヴィットリアの23mmと25mm、コンチネンタルの23mmと25mmとスポーツバイクつくばマツナガのチューブラータイヤの品揃えが充実しているのは、チューブラータイヤもユーザーの重視する性能に合わせて選べるようになっているのです。ボクのお薦めは、段差乗り越しでの体重移動によるショック吸収などの気遣いは必要ですが、クッション性やグリップ力や転がり抵抗の小ささなど、乗り心地重視でクリテリウムです。

 

チューブラータイヤメーカーのクレメンは、創業者のフランス人がイタリアに移住して興したメーカーで、後にイタリアのタイヤメーカーのピレリの傘下になって、ヘッドオフィスと広報がイタリアで、開発と生産拠点をタイランドへ移し、現在は売却されてチャレンジャーブランドがその生産ノウハウを受け継いでいます。当時の世界選手権やオリンピックでの、ロードやピストのクレメンタイヤの仕様率は高く、イタリア製のクレメンのクリテリウムセタ(絹コード)や、カンピョニシモ・セタエキストラ(絹コード)。ニチナオ商会が扱っていた、チームロードタイムトライアル用のコラーロ(コットンコード)は最高峰の魅力的なチューブラータイヤでした。クレメンも、フランスのミシュランやデュガストも、世界選手権やオリンピック向けの、各ナショナルチームからのオーダーで決戦チューブラータイヤを生産していました。タイヤコードの1インチ当たりの密度、リムとの接着面の裏布や、軽量ラテックスチューブを縫い目から保護する布の厚さ、中へ縫い込むチューブの肉厚や重さ、タイヤカーカスに張り付けるトレッドゴムの幅や厚さ、グリップに関係するコンパウンド、バルブの長さなどが選べたそうです。その各チームからのオーダーで作ったタイヤが納品されて、毎年余ってシーズン後半に放出された物を手に入れていました。

 

フランスのデュガストのセタとコットン。フランスのドールドワーニュのセタ。チューブの材質や重さは、タイヤのしなやかさ、ショック吸収性や転がり抵抗に関係します。全ての決戦モデルは、しなやかで軽量なラテックス製でした。自転車雑誌の仕事をするようになって、クレメン、ヴィットリア、デュガスト、FMB、ヴェロフレックス、ミシュラン、ハッチンソン、リッチー、コンチネンタル、ソーヨーなど、色々な決戦チューブラータイヤを試しました。195gのロードチームタイムトライアル用のコラーロは20mmと細いタイヤでしたが、スムーズな路面での走りの軽さは印象的でした。180gから240gクラスの決戦用のチューブラータイヤはとにかく高価でした。大学卒業のサラリーマンの月給が13万円くらいの頃に、1本7500円から3万円というタイヤでした。

 

おいそれとは使えない高価なタイヤだったけど、リムセメントで1日かけて張ってセンターをきっちり出して使ってみると、どのモデルもロックさせないように走るなど、取り扱いがデリケートなタイヤだったけど、体の芯に、しなやかなタイヤサイドの制動距離は伸びるけどブレーキング時に真っ直ぐ進む安定感、スラローム走行での素直なハンドリング、スムーズな路面から荒れた路面でも追従性に優れてグリップ力の変化が少なく、路面の荒れによるショックの吸収性など、高性能タイヤの感触がはっきり残っています。

 

実測20mmのコラーロから、セタエキストラなどの21、5mm(呼び寸法22mmから23mm)のタイヤでしたけど、どれもこれも、路面のデコボコを吸収して、路面状況をストレスなく伝えてきて、いざというときのハンドルの切り返しにもタイヤがしなやかに追従して、驚異的なグリップ力を発揮します。いま、そんなにしなやかなチューブラータイヤが存在するのかと言えば、フランスのハンドメイドメーカーのディガストか、FMB の2ブランドくらいしか見当たりません。かろうじてイタリアのハンドメイドの、ヴェロフレックスブが、昔ながらのしなやかなチューブラータイヤを供給しています。

 

同じイタリアのブランドで、現在はタイランド製のヴィットリアのチューブラータイヤは、ややタイヤサイドが硬いですし、トレッドゴムの部分とチューブの間に入っている、グラフェンの耐貫通パンクブレーカーのベルトは、タイヤが軽いせいか、それほど効果的とは思えません。日本のソーヨータイヤにもロード用の240gくらいのシルクコードタイヤや、ポリコットンコードのシームレスタイヤがあるけど、しなやかで軽量なラテックスチューブがロード用ではないらしく、高圧設定や一般公道の路面の段差などの衝撃に耐えられないのか、耐パンク性能が実用的なところに達していませんでした。ではでは。