クマさんのバイク専科

ペダリングを変えるのは難しいけどチャレンジしよう!

 

雑誌やネットで紹介されている、これをマスターすればすぐにパワーアップするとか、速くなる的な特集がありますが、そんなイージーでお得なことがそこら中にあると思います?。改善のメソッドに取り組んで即効で効果のあること、結果が出ることなんて、スポーツに限らなくてもめったに世の中にはないと思いませんか?。テニスの基礎のフォアのショットだけでも何百回、何千回も打って正しいフォームを身に付けるものですよね。そこができなくて、ゲームをやっているのと同じで、なかなか進化しないんじゃないですか?。もちろんスポーツバイクも、コツやイメージを意識して改善のメソッドに取り組んだ方がいいに決まっています。でも、即、効果を求めるのはどうかな〜。

 

ロードバイクという、クリート、サドル、ステム、ハンドル、ブラケットのポジションを変更できたり、踏むギヤ比を走りながら変速できたり、ブレーキも付いている機材を使って、機材の使いこなしも含めてのスポーツです。でも、子供のころから自転車には乗れてしまっているので、わざわざスポーツバイクの乗りこなしを教わるまでもないかと、自転車生活を始めてしまうのが普通でしょう。でも、本当はライダーの体格や体力や走る距離に合わせてポジションの最適化を行い、パワーを発揮できて快適に走れるポジションに設定して、自転車生活を始めるべきです。

 

スポーツバイクのブレーキや変速のタイミングなどの使いこなし方を、実際の平地、上り、下りのコースでレクチャーを受けたり、平地、上りのシッティング、ダンシングなどのペダリングやコーナーリング、集団走行の走り方など、しっかり教えてもらった方が、自己流で走っていたり、ちょっとだけ断片的に教わるより、安全に速く走れるようになりますし、そこからの自転車生活がより楽しくなります。そういうチャンスがあったらぜひライディングテクニックのセミナーに参加してみてください。

 

先日の6月の黒姫合宿に参加した、アイスホッケーで鍛えた経験がある大王のNさんに、フォームの変更とペダリングの改善を提案させてもらいました。スポーツバイクを始めるときに、軽めのギヤ比で回すペダリングを身に付けルアドバイスを受けていれば良かったのですが、アイスホッケーのフルパワーのダッシュを繰り返すスケーティングで鍛えられた、膝から下の脚の筋力の発達が半端じゃありませんでした。鍛えられているだけに瞬発的にも速く耐乳酸性も高いので、頑張って筋力頼りの踏み込むペダリングをしても、けっこう粘って斑尾も戸隠も走っていましたが、より長くパワフルに快適に走るには、ケイデンスアップと、踏み込み過ぎないペダリングへの移行がテーマと思いました。

 

自己流でやってきたライダーは、毎分当たり70回転から90回転ぐらいの、ぐいっと脚の筋肉にかかる負荷(ギヤ比の重さ)でクランクを踏み込んだ実感、1踏みで前へスーッと進む距離が長い感じ、スピードが出ている実感がNさんには確かにあると思います。ケイデンスが100回転近く高い、くるくる回すペダリングをアドバイスされて、真剣に取り組んで身に付けていないと、どうしても、このぐいっと踏んで前へ進む感覚が正しいペダリングと思ってしまいがちです。

 

ところが、ケイデンスが90回転以下の低い踏み込む感触のペダリングは、1踏みの脚の筋肉への負荷が大きく、乳酸がじわじわと発生して、乳酸に耐えて脚を動かせる耐乳酸性の鍛えられたライダーでも、心肺機能が高く運動しながら乳酸を除去する能力が高くても、1時間から2時間で、血中乳酸濃度が高くなって、筋肉を破壊しないために収縮が抑制されて、それまでと同じようにはクランクを踏めなくなります。

 

というわけで、まず踏み込み重視のペダリング改善のメソッドの第一段階が、LSDトレーニングしながら高いケイデンスに慣れる方法です。もちろん毛細血管を発達させて酸素を体内へ取り込む量を増やす、心肺機能を向上さて、乳酸を除去する能力を高める効果もあります。でも、LSDトレーニングで、Nさんにとって重要なのは、運動強度を低く抑えるトレーニングの走りで、軽めのギヤ比で、ケイデンスの目標を90回転以上、できれば100回転から110回転を目標に、軽いペダリングを2時間、3時間と続けて走ることで、ケイデンスの高いペダリングに体を慣らすことです。繰り返しになりますが時間はかかります。

 

トレーニングを始めると、まず気になるのは、脚が今までより10回転から20回転近く早く回すこと、それを何度も体験して、時間をかけて慣れてしまうことです。これだけ早く回しているのに前に進んでいないなーとか、スピードが出ていないなーという、ちょっとじれったい感じに陥ります。でも、それにも慣れてしまうことです。毎週2回LSD の走りに2時間とか4時間チャレンジしても、これには1ヶ月から2ヶ月くらいかかるでしょう。最初にも書きましたが、雑誌でコツや感覚やテクニックを紹介して、読んだり写真や動画を見て、知ったらすぐに改善できるというようなことではありません。時間は絶対にかかります。

 

辛抱強く取り組むことでしか、このくるくる回しても、そこそこのスピードしか出ないけど、脚の筋肉へのダメージが少なく、乳酸の蓄積も少ない、この効率のいい巡行スピードを高く保てるようになるペダリングの感覚を、普通に感じることを身に付けることができません。LSDトレーニングは、平地でも上りでもできます。ただし、上り坂でもくるくるクランクを100回転回せる軽めのギヤ比を取り付けてください。LSDトレーニングの指標は運動強度で、スピードではありません。運動強度は心拍計でチェックするのが一般的です。

 

Nさんの場合は、心拍計を付けてライドして、1分くらい頑張ってもがいて走った直後の最大心拍数を測って、寝て起きた直後の心拍数を、寝たままの状態で平常心拍数を測ってLSD レベルの心拍数を算出します。最大心拍数—平常心拍数×75%ープラス平常心拍数で、上下5拍くらいの運動強度を保って走ります。N さんの場合は、目的が踏み込み重視のペダリングからの脱却ですから、LSD の動強度を厳密に守る必要はありませんが、踏んでケイデンスを高く保つのではなく、軽く回せるギヤ比を選んでくるくるクランクを回して走るイメージです。少し呼吸数や心拍数が高くなり、少し苦しく感じるかも知れませんが、脚の筋肉へのダメージは乳酸値の上昇で脚の動きが抑制される状況は軽減されます。

 

もし、スピードで運動強度をコントロールしたい場合は、Nさんの走りを黒姫合宿で見た感じでは、平地の無風状態で時速23kmから25kmくらいキープです。上り坂でも隣りのライダーとおしゃべりできるくらいの、ゆっくりしたスピードで走るとLSDレベルの運動強度になります。ケイデンスを上げないと、確かに呼吸も心臓も楽なので、自然にやってきた、頼りにしていた踏み込み重視のペダリングのイメージを変えるのはけっこう大変です。回すのが効率的とか知識としては理解できても、すぐには回すペダリングを継続できません、ストレスを感じることなくできるようになるまで、ぜひチャレンジしてください。ではでは。