クマさんのバイク専科

シフトケーブルの抵抗を考える!

シマノのDi2の電動メカを採用するライダーには、ブレーキケーブルのみとなりますが、
メカニカルの変速機を採用している場合は、ブレーキケーブルとシフトケーブルの抵抗を減らすことは、
メカニカルの変速システムやブレーキシステムのレスポンスを向上させます。
カンパニョーロは昔からウルトラローフリクションケーブルというブレーキと変速機用のケーブルを用意していました。

シマノはもちろんアウターケーブルの中に樹脂製ライナーチューブを通したケーブルを採用していました。

一般的なロード用のケーブルは、抵抗を減らすフッソ系樹脂ライナーチューブに、
スチールやステンレスの鋼線の組み合わせでした。
アウターケーブルが長くなって抵抗が発生しやすいMTB モデル用に、
抵抗を減らすためにインナーケーブルの表面にコーティングしたモデルが登場して、
ロードモデルにも採用されるようになりましたが、決定的に抵抗を減らす製品ではありませんでした。

シマノは11段のコンポーネントへモデルチェンジする時に、最上級ロードレーシングモデルのデュラエースに、
ブレーキもシフトも性能を向上させる要素の1つとして、低フリクションケーブルを開発して投入しました。
ブレーキにおいては、フロントはアウターケーブルも短くダイレクトな引きで軽い引きなのですが、
アウターストッパーや内蔵などで抵抗が発生して、引きが重くなる傾向があるので、
リヤのブレーキレバーの引きを軽くできて、しかもリターンもスムーズになります。

ブレーキもシフトも、ケーブルの抵抗を減らすアイデアは昔からありました。
ゴアライドオンケーブルの初期のモデルはアウターケーブルも太く、
アウターケーブルの中に抵抗を減らす樹脂製ライナーチューブが入り、
インナーケーブルにも樹脂ライナーチューブがかぶされていました。
初期性能は高く驚異的な引きの軽さを実現するのですが、
6ヶ月も使っているとだんだんライナーチューブが摩擦して、動きが重くなってしまいました。
しかも、アウターケーブルが太くて硬いので、
リヤブレーキのケーブル側がまずスタビライザー化して、ハンドリングに影響しました。

もう1つのシフトケーブルも、当時のデュアルコントロールレバーは、
先端から昆虫の触覚のように出ていましたから、やはりアウターケーブルの硬さでスタビライザーの効果が発揮され、
しかも、変速操作でシフトケーブルが張られた状態になると、よりハンドリングに影響がありました。
ゴアライドオンの後期モデルはジャグワイヤー製造で、ラインーチューブでフルカバーされた、
シフトとブレーキケーブルが市販され、アウターケーブルは細くなり、フリクションも小さく人気がありました。
この高価なケーブルセットもライナーの消耗が激しくて1万kmで交換でした。
ライセンス生産が停止して数年が経過しています。

1990年にシマノがデュアルコントロールレバーを開発して、
変速レバーとブレーキレバーから手を放さずにブレーキも変速も操作できるようになりました。
その段階でインデックス変速の操作のしかたが変わりました。
ダウンチューブに変速レバーがあった時代とは、変速の基本テクニックの部分で変化が表れます。
変速レバーを引きながら、脚を踏み込むようになったのです。

最新のコンポーネントは、かなりチェーンが移動しやすく改善されてきました。
デュアルコントロールレバーになって、リヤのシフトケーブルは引っ張られながら、
クランクを踏み込む状態でも変速傾向になっているので、
ダウンチューブの変速レバーで脚の力を緩めてペダリングしていたのとは比べ物にならないくらい、
インナーケーブルにストレスがかかるようになりました。
しかもインナーケーブルの巻き取り部はアールが急になっているので、
変速インナーケーブルの交換時期は短くなっています。1万kmくらいのライダーもいますね。

シマノのデュアルコントロールレバーも、カンパニョーロのエルゴパワーシフターも、
シフトケーブルの巻き取り部が小さく、アールが急になるのでケーブル切れのトラブルが発生しがちです。
レスポンスが悪くなったら切れやほつれを考えて点検交換しましょう。
シマノもカンパニョーロの手もとシフターは、ドロップバーへブレーキケーブルもシフトケーブルも沿わせる構造になって、
ハンドリングへのケーブルの硬さによるスタビライザー的な影響は少なくなりました。

ところが、今度はハンドルにケーブルを沿わせることで、
ブレーキケーブルやシフトケーブルに小さい曲がりが何カ所も発生することになり、
アウターケーブルとインナーケーブルの摩擦抵抗の軽減が課題になりました。
2つのケーブルをドロップバーに沿わせる構造だったカンパニョーロは、ウルトラローフリクションケーブルという、
樹脂製ライナーチューブをアウターケーブルへ通し、抵抗の低い金属製インナーケーブルをいち早く採用しました。

シマノは11段対応のコンポーネントを開発する時に、変速レバーの引きを軽く、
しかも変速レバーのストロークも小さくして操作しやすくするコンセプトで開発を進め、
インナーケーブルに抵抗を減らす樹脂コーティングを施し、アウターケーブルの中には、
よりしなやかな樹脂チューブを通して、抵抗を減らすケーブルを開発しました。
これは同じコンセプトでブレーキケーブルにも採用されて、流行のフレームの中にケーブルを内蔵する、
インターナルケーブルルーティーンで、抵抗が発生しやすい構造でも軽いブレーキレバーの引きや
スムーズなリターンの動きを実現しました。

デュラエースグレードと、アルテグラグレードの低フリクションケーブルがリリースされていますから、
シマノユーザーは105のコンポーネントでも、ぜひ低フリクションのケーブルへの交換にチャレンジしてみてください。
変速レスポンスとブレーキの引きのレスポンス(ブレーキの利きではない)を向上させることができます。ではでは。