クマさんのバイク専科

タイムのZXRSを駆る「ぶりお」インつくば:パート1

フランスのタイムスポーツ社のカーボンフレームを語るとき、タイムの中でも剛性の高いフレームとしてZXRSが印象に残っています。カーボンラグにカーボンチューブを接着したRTM工法を採用したフレームセットとして、最後のフラッグシップモデルです。
ほぼ同時並行的に生産されていたのが、セミモノコック工法の前三角のインスティンクトシリーズです。
当時の2モデルのインスティンクトは、前三角を生産協力工場で仕上げることができるので、
チェーンステーとシートステーを前三角へフランスの工場で接着するだけになるので、
タイムブランドの製品の生産量を増やすことも可能です。

ZXRSのフレーム重量は1000g前後というカーボンフレームとしてはけして最軽量クラスではありません。
というより剛性と強度のバランスを、このカーボンラグとカーボンチューブを接着する製造工法でバランスを考えると、こうなるという微妙な重さのモデルでした。
現在カーボンフレームの製造方法の主流になった、最小限のカーボン素材ト熱硬化樹脂で剛性バランスや強度を追求する、
セミモノコック工法の最軽量クラスの650g台と比較すると軽くはありません。
しかし、踏み出しの軽さ、高速巡行性能、剛性バランスなど、
カーボンラグ&カーボンチューブ接着工法のフレームとしてZXRXは最高峰のモデルであったことに間違いありません。

石川県のぶりおクンは、黒姫高原るんるん合宿のお客さんの一人です。
たまたま乗り換えるカーボンフレームを探していて、タイムの当時の最高峰モデルのVXRSを探し始めて、
たまたまツールドフランスのアニバサーリーモデルがあることを知りました。
ブラック基調で金色のストライプ入りでカッコいいと気に入ってスポーツバイクつくばマツナガで、
カスタムバイクとして組んでもらいました。
定期的なメンテナンスもつくばへ送って来てやっています。3万km走っていたそうです。

当時のタイムのフレームの主流のRTM工法とは、最適な弾性率(引っぱり強度)のカーボン繊維を用意して、
編み上げるための糸(フィラメント)を自社工場で作り、フロントフォークやシートステーやチェーンステー、
前三角のフレームチューブなど、製品の形状に合わせてカーボン繊維の糸を編み上げます。
カーボン製のラケットの製造などにも使われている方法です。
熱をかけるとドロドロの液状から硬化して、対衝撃性などの強度を発揮する樹脂のエポキシを、
専用の機械でカーボン糸を編み上げたものに樹脂を含浸させて、内側にロストワックスの型、
またはエアバッグをセット、外側に金型をセットして、不活性ガスを封入した炉で加熱成型する製造方法です。

カーボン繊維を糸にして、ナイロンやスパンデックスの糸を編み上げるパンティーストッキングを作る、
3Dで編み上げる機械を思い浮かべてください。
アツギのタイツなどのニットを編み上げるブランドのホームページで。
この機械はチェックできます。ニット製品を立体的に一体で編み上げる機械とも似ています。
設計図どおりの形にカーボン繊維の糸を袋状に編み上げて、その繊維の間に熱硬化樹脂を含ませて、
内型と外型に入れて、真空引きと加熱したり、熱処理炉で熱をかけて硬化させて成型する方法です。

比較的古いカーボン繊維の成型方法で、カーボン繊維の糸を編み上げる段階から作業が始まるので、
手間ひまがかかる製造方法です。プリプレグのように、最小の量で強度を発揮でき、コントロールできる、
カーボン繊維本来の強度を発揮する繊維方向をコントロールできない工法なので、強度を引き出しにくい成型方法です。
この成型方法ではカーボン繊維の静加重試験でどのくらいの重さに耐えるかという数値が高いことも大事ですが、
含浸させる熱硬化型の樹脂の熱硬化してからの強度が、フレームやフォークの強度や剛性を左右します。

だから、メーカーの採用可能な軍需産業からスピンオフした特殊な樹脂の採用など、
その樹脂の特性でカーボン&ラグ接着工法も、セミモノコック工法も、
カーボン繊維のグレード、プリプレグを重ねる枚数、含浸させる樹脂の特性、断面設計、製造行程でのボイドの排除、
加熱処理の均一性などで、フレームやフロントフォークの剛性や強度が左右されます。
しかも、いずれの工法を採用したタイムの新旧のカーボンフレームも、タイムらしい優れた性能を発揮します。

それはタイムスポーツ社の開発スタッフが、カーボンフレームの特性を引き出す素材や
断面形状などのフレームのデザイン、肉厚配分、カーボン繊維のグレード、スケルトン
などのノウハウを持っていることを示しています。
トップライダーやホビーレーサーがカーボンフレームに求める性能を把握して、
それをプロトタイプとして具体化できる対応能力を持っています。
そのフレームチューブなどの素材を供給する、アジアの生産拠点のクオリティコントロールもできていると言うことでしょう。

タイムのインスティンクトシリーズは、ラグとチューブを一体成型して接着で組み上げた、
セミモノコック工法を採用した前三角を採用しています。
前三角をフレーム素材製造の協力工場で生産して、フロントフォーク、チェーンステー、
シートステーが従来からのRTM 工法で製造されています。
フランスのディジョンという自転車産業が集中していた工業都市の自社のファクトリーで接着して、
塗装行程で仕上げられてメイドインフランスや、ヨーロッパのロゴが付いています。
フレームには必ず各工程を最終チェックした担当者のサイン入りのギャランティシートが取り付けられて出荷されています。
パート2へ続く、ではでは。