職人マツナガ通信

イタリア就職記 (26)

道具は多少違いますが、作る物は同じですから、ここまでたどりつけば後は、それほど困ることはありません。
メインの作業はボクが、こまかいデザインに関することはP氏に相談しながら、イタリアン治具を使って、ない道具はつくりながら、カーボン&クロモリ接着フレームをつくりあげました。
このフレームたしか、出来てすぐ、まずP氏の知り合いのアマチュアMTBレーサーに乗せて、いいとなったら、知り合いのプロ選手に乗せました。

最初に書いた、なぜP氏は最初にMTBをつくらせたのか、このとき理由が分かりました。
ある時仕事をしていたら、P氏がいつになく上機嫌でニコニコしてやってきて、思いっきり肩をたたいて(と言うより殴るに近いです)、おめでとう!というのです。
ボクはなんのことやらさっぱり分からず、キョトンとしていると、ボクのつくったMTBが例のプロがつかって優勝したということでした。

199102.jpg
このときのP氏の言葉がふるっていて、
”優勝したのはよかったけど、壊れなかったのはもっとよかった、
今日はおまえがおごれよ”だと。
そうなんです、P氏はこの時点ではまだ、カーボン&クロモリ接着フレームの強度を信用していなかったんですね。
だから、負荷のおおきいMTBをつくらせて強度をみていたんです。
でも、このつくったものが、すぐ現場で評価してもらえる、
これこそがボクが欲しかった仕事環境だったんで、
ボクもうれしかったです。
でも、ボクのめざしているのはこのレベルではないので、P氏の喜びとは違う内容の喜びでしたが。
 
このバイクは、化粧直しをしてミラノショーに出展されました。