図面。
ボクがフレームビルダーを志した頃は、
コンピューターもない時代でしたので、
自転車を作るときは設計図を引いていました。
ボクも製図を習ったりしていました。
ただ、ボクが修行させて頂いたアマンダスポーツでは、
自在フレームというものを千葉さんがつくっていて、
それを使ってチューブの実寸をだしていたので、図面を引いたことはありません。
自在フレームとは、ヘッドチューブ、トップチューブ、ダウンチューブ、シートチューブ、
それぞれが可変できるしくみなっていて、
治具を図面にあわせてセットして、この自在フレームを治具にセットして寸法をだします。
アマンダスポーツで仕事を始めて程なくして、世の中にポケットコンピューターなるものがではじめました。
数式記憶電卓ですね。
まずは、スポーク長さ計算公式を記憶させたりして使っていました。
何がきっかけだったのかは、思い出せないのですが、
フレームの設計ができそうだと思い、数式作りをはじめました。
フレームの絵を元にして、これを三角形に分けていき、
三角関数を駆使してつくりました。
一応基本設計ができるようになりましたが、実際のパイプカット寸法までは、わかりませんでした。
で、次にこの実寸を出せるように、さらに公式を拡大させていきました。
その後、スローピングがはやり、それに対応する式もプラスして、
何世代かを経て、現在のプログラムになっています。
途中、コンピューターのCADもでたりしたのですが、
自分の作ったもので事足りていたので、少し勉強しただけでやめてしまいました。
二十五年前、ボクがイタリアへ就職に行ったとき、
イタリアの工房で、このポケコンで設計したものをみせても、
イタリア人はその数字を信じませんでした。
この工房は、当時ツールに出るような選手のバイクを作っていたところです。
イタリアではその時は、まだ新たなものは図面を引き、
スタンダードなものは、一本サンプルマスターフレームを作っておいて、
そのサンプルマスターフレームを元に治具をあわせていました。
日本では既にCADをつかったフレーム設計をしていましたので、
やっぱりイタリアより日本の方がすすうでいるなぁ、と改めて感じたものです。