職人マツナガ通信

6月10日

フレームを製作するにあたり、
全日本クラス選手のモノのと、
ツーリングで使用するモノとは、
作り方が違うのでしょうか、
ということをたまに聞かれることがあります。
答えは、ほとんど違いません、ということです。
作り方に関してはまったく同じといってもいいと思います。
乗り手の体格、目的にあわせて、
素材、寸法を決めて同じようにつくります。
ただ、作り方は同じですが、
できあがったモノは、一見同じようにみえても全く別物です。

ヨーロッパなどで走る選手に作るときは、
ちょっと、違った要素が入ってきます。
たとえば、トッププロのように、
ちょっと不具合が生じたらすぐに代車をもらえるような選手ならい
いですが、
日本からでていく選手は、まずそういう待遇の選手はいないでしょ
うから、
ちょっとやそっとではこわれない、
ということが大変重要になってきます。
また、トラぶったときに、
現地で何とか対処できるように、
規格品はできるだけ現地で手にはいるようなものにしておくとかも
重要です。

福島コ~ジくんに限っていうと、
体重70kg以上の彼が、
日本の農道のつぎはぎだらけのアスファルトのような悪路を、
時速50kmに近いスピードでかっとんでいって、
決して上手とは言えないハンドリングで、
大転倒などもすることがあるのです。
こんなことがシーズン中にあって、
自転車がぶっこわれしまったら、
翌日から仕事が出来なくなってしまいます。
そんな事のないように、
細かいところまで、
できるだけノントラブルでいけるように気をつけます。
通常はこんなに頑健につくってしまうと、
フレームが強くなりすぎて、
身体にきてしまうのですが、
そこはカーボンのすばらしさ。
強いのに疲れない、という矛盾したことが実現できます。
幸いにして、去年から乗っている1号車は、
顔を三十何針ぬうくらいぶっ飛んでも、
いまだに健在です。

どこのフレームの製作者もこんな風に、
いろいろな事を思い入れながらモノをつると思います。
ですから、外見をちょっと見ただけで、
軽いだ、重いだ、堅いだ、やわらかいだと、
簡単に評価されるのは、
あまり好きじゃないですね。