職人マツナガ通信

イタリア就職記 (20)

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画像は与えられた治具で作業をしているところです。
イタリアの治具はこのように、
立てて使われる物がおおいようでした。
日本で使っていたのは、
横型でまさに定盤の上でつくるという感じでした。
これは日本人の設計による日本人の製作品です。
このあたりにも、日本人とイタリア人のものつくりの
根本的な発想の違いを感じます。
 
イタリアで使っていた治具は、ベースになる鉄板はかなりしっかりしていますが、立てて使えるぐらいの重さの物でした。
かたや日本で使っていた物は、決して立てて使えるような重さのものではなかったです。
治具の面は、フレームの各部の寸法を正確につくるベースになる大元のところです。

この面が歪んでいたら、フレームのどこがセンターかがわからなくなってしまいます。

ですから、几帳面な日本人としては、限りなく歪みのない水平な面を出すために、治具の裏面に、ものすごい井桁をいれて歪みを止めた設計をしたので、とても立てて使えるような重さの物はできなかったようです。
アメリカに行ったときも、何人かのビルダーの治具をみせてもらいましたが、今日本で使っている以上のものはみたことがありませんでした。
逆にアメリカのビルダーが買って帰ったという話を聞いたことがあります。

しかし、ここで考えるのは、自転車のフレームごときに、0.何ミリの精度がいるのかなということもあるような気もします。
ですから、一概にイタリアのものはダメともならないとおもいます。
実際に作業してみて、縦型、横型、どちらにも一長一短がありました。
ボクとしては、どんな道具でも、同じ物をつくりだすのが職人の腕と考えてましたので、特別に不満もなく、工夫してこの縦型で作業をしてました。