職人マツナガ通信

9月8日

お店の定休日、そしてボクの夏休み最後の日。
なのですが、この日もメーカーの展示会でトーキョーへ。
おシゴト開始です。

休みの間は、TVも新聞もインターネットもみず、
できるだけボーっとアタマの中を空っぽにして、
好きな本だけを読んでのんびりと過ごしました。

実家へ帰った時に、おもしろいもの思い出しました。
ボクの作ったママチャリです。
アマンダでシゴトをしている時に、
身長が極端に低いお袋のためにつくった、
フルオーダーのママチャリです。
作ると決めてから、よ~し、いっちょ、奇抜なママチャリをつくったろと、
意気込んであれこれ、デザインしましたが、
これが、考えれば考えるほど、
市販されているママチャリは完成されており、
市販のもののデザインを大きく変える事は諦めました。
このカタチの自転車に、前に後に子供をのせて、
おそらく総重量100kg近い荷重に耐える剛性が必要であったり、
スカートでのるために、またぎやすいように、
トップチューブ位置は低くしなければいけないとか、
とにかく、つくってみて、
日本のママチャリはすごい!ということを認識させられました。
結局、無難なデザインになりましたが、
リアキャリアをフレームにあわせてつくったり、
重量がかなり軽いというようなオンリーワンなママチャリに仕上がりましたが。

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イタリア就職記 (22)

イタリアへついた翌日から仕事を始めたのですが、
すぐに製作というわけにはいきませんでした。
ボクが作る、カーボン&クロモリ接着フレームに関する材料や特殊な工具なども、
P工房には全くない状態でしたので、
これらを調達することが最初の仕事でした。
ボクのフレームの生命線である高弾性のカーボンチューブと工業用接着剤は、
イタリアではまず手に入らない事がわかっていましたので、
これは日本から持ってきました。
余談ですが、このカーボンファイバー(炭素繊維)は日本人の発明なのです。
そしてその生産の大半は日本製なんです。
今でも、LOOKやTIMEなどのフレームも使われている炭素繊維は日本製だと思いま
す。
ラグ用の特殊径のクロモリチューブ。
これが一番心配していたものでした。
P工房もマスプロメーカーではないから、
結構特殊なバイクをつくるっているので、
通常径ではないチューブを結構もっていましたがすぐには見つからなかったです。
工房内をあっちこっと探してみて、
ないということがわかると、
P氏が大したながさではないから、
普通の炭素鋼のチューブでいいじゃないか、
と言いだした。炭素鋼ならあったのだ。
ボクは溶接後の強度がべらぼうに違うので、
ここはどうしてもクロモリにこだわりたい部分でした。
いくら口で説明しても納得してもらえそうになかったので、
百聞は一見に如かず、
目の前でその違いをみせるしかないなと考えました。
そこで、ぼくはP氏にチョット待っていて、といい、
チューブの端材を利用して、
クロモリと炭素鋼両方をロー付け(溶接)をして、
付け終わったものを、接合部に応力が掛かるように破壊してみました。
こうすると、クロモリの方はロー付けした接合部分から壊れるのですが、
炭素鋼の方は、接合部分ではなく、チューブのほうが壊れてしまいました。
このこのこわれた切り口ををP氏にみせて、
ね、だからどうしてもクロモリがいるのですよ、
と説明したら、
さすがのP氏も、おもしろくなさそうな顔をしながら、
探すから待っていろといって、
コロンブス社へ連絡を取ってくれました。
しかし、急場で思いついたこの実験、
こんなに見事に違いが出るとは思いもしませんでした。
日本にいたらこんなことは、素材のデータの数字でわかることですから、
あらためて実験してみることはないですよね。