オーダーフレームの御注文のいただけるお客様の中では近いとはいえ、栃木からご来
店頂いたI塚さん。
かなりの詳細はメールでやりとりしていましたが、実際に会って、体格をみて、現在
使用中の自転車をみて、お話しをしてみて、具体的なイメージが出来上がりました。
体格や使用中のバイクをみるのはハード的な部分のデーターとして必要となります。
お話しすることは、オーナーがボクがつくる自転車に何を期待するかということを引
き出すためにとても重要となります。
このオーナーが何を意図するかを知るというが重要というのはボクのものをつくりの
姿勢からきているとおもいます。
ボクは、オーナーの希望することがよほどの害がないかぎり具現化することが、出来
あがたものが満足感を与えてくれると考えているからです。
ですから、お話ししてご説明して、それでも必要というのであれば実用的でなくても
不必要なものでもつくります。
これって、自転車つくりに限らずものをつくる職人さんのタイプによるものだと思い
ます。
たとえば、ボクの姿勢とは対局に”オレがいいってんだから、オレがつくったものを
だまって食えよ”というタイプがあると思います。
これはこれで、何が出てくる分からないけどその職人さんの腕まるまるを体験できる
とおもうので、受け手としての楽しみはあるとおもいます。
どちらのタイプがいい悪いではなく、受け手がそれぞれを楽しめばいいと思います。
ボクが東京のアマンダスポーツで仕事をさせてもらっていたとき、
大部なれきてフレーム製作を任されるようになった頃、常連さんのIさんから注文が
はいりました。
Iさんは、それまでにも何本かアマンダスポーツでフレームをつくっていました。
ボクが担当するのは今回がはじめて、使用目的が山岳サイクリングということで、注
文内容がメチャクチャ細かく、ボクはとにかくオーダーシート通りにきちっとつくる
ことに細心の注意をはらいながらつくりました。
できあがりは、ボクにとっては満足のいくもので、自信満々でIさんに手渡すと、
何と返ってきた返答は ”なんだ、注文通りにできちゃたんだ、つまらないな” で
した。
Iさんにしてみれば、師匠である千葉さんがつくればもっとなにかちがったものが出
来たんじゃないの、という言葉の裏返しだったんでしょうね。
これは、先の”オレがいいってんだから、オレがつくったものをだまって食えよ”と
いう部分がフレームに入っていなかったからなんでしょう。
もっとIさんとお話しをして、Iさんの望んでいる部分をくみとるべきだったんで
しょう。
フレームの形はつくれても、自転車をつくるということに関してはまだまだ自分は未
熟なんだなと思いしらされた経験でした。
もちろん現在、お客様のリクエストをきくというのは、お客様のいうとおりのものを
つくるということだけではなく、
よくお話してお話しの中に”おめえのつくるものが食いてんだよ、ごちゃごちゃいわ
ないからうめーもんつくってくれよ”ということが感じ取れればそういうものもつく
ります。
ボクにとって大事なのは、お話をして相手がどんなものを食べたいかを察するという
ことなんです。
これはフレームつくりから学んで、今ではものを売っていく上での自分の基本姿勢に
もなっています。